9.気象・天気のはなしH 日射・日照

1.日射
 日射は、気象現象のエネルギー源として最も基本的な気象要素です。その観測値は、地表の熱収支あるいは大気循環などを解明する上で、大気や地表からの放射量とともに重要です。また、日射は、動植物の生育をはじめ人間活動に直接的に影響を与えるため、農林水産業、工業、建築、衛生などの広い分野に利用されています。太陽から地表へ注ぐ電磁波の各波長における放射照度を図1に、その分類と名称を図2に示しました。電磁波(太陽放射エネルギー)の波長成分は、0.25μm(紫外線)〜25μm(熱赤外線)に至る広範囲に及んでいます。


図1 各波長における分光放射照度


図2 電磁波の分類と名称

 この内、総エネルギーの約97%を占める0.3〜3μmの太陽放射を短波放射あるいは単に日射と呼んでいます。地表面における日射成分には次のように分類することができます。

1)直達日射:短波放射の内で,大気を通して直接平行光の形で地表に到達する日射です。
2)散乱放射:大気に吸収・減衰された後,地表に到達する成分と,雲などにより反射した成分を合わせた日射です。
3)全天日射:通常,日射と称するもので,直達日射と散乱日射を合わせたものです。

 日射の測定値の単位は,従来1平方センチメートル当たり1分間のカロリー値(cal/cm2/min)が使用されてきましたが,世界気象機構(WMO)の決定により,わが国でも1981年に国際単位に変更されました。このため、現在では日射の瞬時値(瞬間的な測定値)は1平方メートル当たりキロワット(KW/m2)を単位とし,積算値(瞬間的な測定値を積算した値)は1平方メートル当たりメガジュール(MJ/m2)で示します。cal とJの関係は、次のようになります。単位の変換は、各種のホームページで簡単に計算することができます1)

        1cal =4.184J

 日射計(英弘精機製、MS-401型)の概観を写真1に示しました2)。日射計は,直達日射を遮るものがなく,煙の影響や建物の壁面からの強い反射光の影響などを受けない位置を選び,露場や屋上などの設置台に取り付けます。日射計のガラス球は絶えず清掃し,霜や雪はすぐに取り除く必要があります。また,ガラス球の内部に水滴が付着して曇りが生じたときは,乾燥剤を取り替えます。
 日射計の測定原理は,日射を受けた物体がそのエネルギーを吸収して温度が上昇する性質を利用しています。白色の物体と黒色の物体では,日射に対する反射率が異なるので,吸収されるエネルギーの差により両者の間に温度の差が生じます。その温度差を,鋼とコンスタンタン(Cu-C)の電堆(多数の熱電対を直列に接続したもの)を用いて測定し,入射した日射量に換算します。


写真1 日射計(株式会社 メティック ホームページより

 図3には下関(地方気象台)の2001年8月2日における日射量と気温の推移を示しています3)。この日は朝からよく晴れており、太陽高度が上昇するにつれて日射量も多くなり、11〜12時の1時間の日射量は3.31MJ/m2に達しています。太陽は12時22分に南中した後、日射量も減少しています。気温の変化をみると、14時38分に最高気温34.9℃を観測していますが、太陽の南中時刻から約2時間のズレが生じています。雲が日射を遮っていない場合、太陽が最も高くなる南中時に日射量(太陽エネルギー)が最も多くなります。日射により地面が暖まり、次に地面付近の空気が暖まり、さらに対流により上層空気の温度が上昇します。このように、気温(1.2〜1.5m)が最高値(最高気温)に達するまでに、約2時間を要することになります。最高気温の最高値(8月上旬)の出現が夏至(1年で太陽高度が最も高い日、6月21日)より約1ヶ月半遅くなるのも、この理由が大きく影響しています。

図3 下関(地方気象台)の2001年8月2日における日射量と気温の推移

●もっと詳しく知りたいひとは
英弘精機株式会社気象観測機器・関連機器http://www.eko.co.jp/eko/a/index.html
株式会社 プリード(製品一覧)http://www.prede.com/file75.html


2.日照
 日照とは、太陽の光が地上を照らすことを意味します。太陽の直射光によって、物の影ができるかどうかが日照の「ある」・「なし」の目安となります。日照時間とは、一日の内で日照のあった時間です。太陽の中心が東の水平線に現れてから西の水平線に沈むまでの時間を可照時間と呼び、可照時間に対する日照時間の比率を日照率と呼びます。

        日照率(%)=日照時間÷可照時間×100

 WMOは日照時間を直達日射が120W/m2 以上ある時間帯と定めています。日照時間の観測をする計器が日照計で、写真2には気象庁で使われている回転式日照計を示しています4)。日照計のガラス円筒の軸は南北に、角度は観測地点の緯度に合わせて設置されています。ガラス円筒内には、30秒間で一回転する鏡が取り付けられており、この鏡によって太陽光はガラス円筒頂部にある受光部に集められ、直達日射量だけを測定します。受光部に入った光の強度が基準の値(しきい値、120W/m2)を超えた時に、日照が「ある」との信号が記録装置に伝達されます。


写真2 回転式日照計(江波山気象館ホームページより)

 1890年から1986年頃までは、写真3に示したジョルダン日照計と呼ばれる日照計が使用されていました5)。この日照計は、円筒の左右45°のところに付けられた小さい穴から太陽光が円筒の内部に照射される構造になっています。内部に青写真用感光紙を入れて、日光により青色に感光した長さを観測者が物差しで測ることにより日照時間を知ることができます。日照時間は、雲の量(雲量)、霧や雨などの発生により短くなります。


写真3 ジョルダン日照計(全気象京都分会データセンターページより

 図4には下関(地方気象台)の2001年8月2日における日照時間の推移などを示しています3)。なお、図3と図4は同日のものです。下関では、日出(5時28分)から日入(19時17分)まで13時間49分の可照時間(昼時間)があることがわかります。なお、各地の日出・日入、南中時刻、太陽高度、昼時間(可照時間)は、「こよみのページ」で簡単に計算することができます6)。日照計により測定された日照時間は10.5時間で、日照率は計算式により76.0%となります。よく晴れた日の直射日光はしきいき値の120W/m2を超えるため、10時から18時までは、いずれの時間帯も日照時間が1時間を示しています。
 下関における夏至(6月21日)の可照時間は14時間26分ですから、約40日で37分(1日で約1分)も日(昼時間)が短くなっています。皆さんが住んでいる場所の可照時間や日照時間を調べたり、日本各地の日照の特徴と比較してみましょう

図4 下関(地方気象台)の2001年8月2日における日照時間の推移

3.照度
 日射量と同じく光の量を測定する概念として照度(単位:ルクス)がある。人間の目の感度は波長によって異なることから、その視感度に応じた重みを付けて光の量を表したのが照度である。

横河メータ&インスツルメンツ(照度計)http://www.yokogawa.com/jp-mcc/gmi/luxmeters/gmi-lux-index001-jp.htm


(注)
1)汎用単位換算器ホームページhttp://archaeopteryx.rgr.jp/text/cal.html
2))(財)気象業務支援センター、気象庁月報(平成13年8月)第4巻8号
3)広島市江波山気象館ホームページhttp://www.ebayama.jp/
4)こよみのページhttp://koyomi8.com/