8.気象・天気のはなしG 気圧

1.気圧とは
 大気(空気)の圧力を気圧と言います。地上の気圧とは,地上単位面積の上に存在する上空の空気の柱を考えてみた時,その重さを指します。気圧と標高の関係を
図1に示しました。地上から高い山に登ると,単位面積にかかる空気の柱の長さが短くなるので,気圧は高さとともに低くなります。地上では,平時の場合は1013hPa(1気圧)で水の沸点は100℃です。標高が1000m高くなるにつれて気圧は約100hPaずつ低下し,富士山の山頂(3776m)では約638hPaで水の沸点も約88℃まで低くなります。これは,沸騰する水面にかかる圧力が高いところでは低くなったために,水が蒸発しやすくなったからです。また,台風や低気圧が通過すると,半時計回りの方向で中心に吹き込む空気よりも,台風や低気圧の中央から高い空に吹き出す空気の方が多いので気圧は低下します。
○ 高地で美味しご飯を炊くには?(http://fuji-san.txt-nifty.com/osusume/2004/05/post_4.html

○ 状態変化と蒸気圧(http://www.tennoji-h.oku.ed.jp/tennoji/oka/2005/05ko3-08.html



図1 気圧と標高の関係

 ピサの斜塔での落下実験や望遠鏡の発明で有名なガリレオ(イタリア)は,晩年に「ポンプはなぜ32フィート(10m)以上に水を吸い上げることが出来ないのか?」の理由について研究をしていました。ガリレオの弟子であるトリチェリー(イタリア)は,1643年に水より重さが14倍も重い水銀を用いて,気圧が水銀柱の高さで測定できることを発見しました。一端を閉じたガラス管(試験管)に水銀を満たし,開いた方の端を親指で押さえて,ガラス管を逆さまにします。そして,水銀の入った皿につけて,親指を離します。すると,水銀の一部は皿に流れ出しますが,大部分はガラス管の中に約30インチの高さの水銀柱となって留まり,閉じたガラス管の頭部に真空の空気ができます(図2)。トリチェリーは,空気の重さが水銀柱を押し上げて,30インチ(760mm)の水銀の重さとつり合っていると結論づけました。この装置は,大気の重量(大気圧)を測定する道具となったので,トリチェリーは気圧計を発明したことになりました。この時から,気圧の単位はcm,mm,インチなどの長さの単位で示されてきました。標準の気圧は,水銀柱では760mmHgで,これを1気圧(1013.3hPa)と呼んでいます1)

図2 水銀気圧計のしくみ(宮澤清治、1996より転載)

 日本では,以前から圧力の単位であるミリバール(mb)を用いていましたが,1992年12月よりヘクトパスカル(hPa)に切り替わりました。この「パスカル(Pa)」とは,フランスの物理学者パスカルの功績を記念して国際表示単位(SI unit)と名づけられたものです。パスカルは,ガラス管上部の真空の真偽,水銀柱を支える力を明らかにするため,トリチェリーの実験を繰り返しました。1648年にトリチェリーの真空実験がパスカルの考案によってピュイ・ド・ドームによって行われ,山頂に行くほど水銀柱が下がったのは,大気の重さがそれだけそれだけ小さくなったからであると結論づけました。
 気圧の単位の名称はヘクトパスカルへと変わりましたが,数値は同じで1mbar=1hPaで換算されます。1パスカル(Pa)とは,1m2の面積に1ニュートンの力(1kgの物体に1m/sec2の加速度を与える力)が作用する時の圧力で,その100倍(h:たとえば,面積1aの100倍が1ha)が1ヘクトパスカル(hPa)です。

もっと詳しく知りたいひとは
ガリレオ・ガリレイ(Galileo Galilei) 1564-1642
パスカル(Pascal Blate) 1623-1662
トリチェリーの実験(杉原和男,京都パスカル)
圧力の計測
圧力換算

単位換算


2.気圧の観測
 気圧を測定する器械には,水銀気圧計(写真12)とアネロイド気圧計(写真23)の2種類があります。水銀気圧計は精度が高いですが,取り扱いが難しい器機です。アネロイド気圧計は,小型で壁に掛けて使用できて簡便ですが,正確な気圧計を用いて校正する必要があります。アネロイド気圧計は,上下両面に波を打たせたほぼ真空の容器(空ごう)が気圧の変化によって膨れたり凹んだりする動きを増幅させて針を動かします(図3)。アネロイドとは「液体がない」という意味です。

写真1 水銀気圧計(佐藤計量器製作所 製品インデックスホームページより転載)


写真2 アネロイド気圧計(太田計器 製品カタログホームページより転載)


図3 アネロイド気圧計の原理(宮澤清治、1996より転載)

 水銀気圧計で読み取った値は,器差補正,温度補正,重力補正などの補正を行って,現地気圧を求めています。たとえば,ラジオで気象通報を放送している気圧は,現地気圧をさらに海面の値に校正した海面気圧です。これによって等圧線を描き,高気圧や低気圧を見つけ出します。天気図上で標高の異なる地点の気圧を比較する場合には,同じ標高(海面)に換算した値によって比較する必要があります。たとえば,標高3776mの富士山の山頂での現地気圧は,通常の平地の値(1013hPa)の約6割の638hPaです。
 標高差があれば,必ず気圧に差が生じます。図1に示したように,標高1000mの山に登れば,気圧は約900hPaになります。現在では,簡易に気圧が測定できる器機,たとえばエコログ4)(中村理科工業製)などが市販されています。高層ビルや山にのぼる前後で標高(高さ)による気圧の違いを観測してみましょう。

●もっと詳しく知りたいひとは
気圧の観測(全気象京都分会)
気象通報(NHK第2ラジオラジオたんぱ

 台風の通過時に山口県の小野田市消防本部で観測された気圧の変化を図4に示しました。1999年9月24日に九州・山口に大きな強風・高潮災害をもたらした台風18号の通過時には,気圧が大きく低下し,8時すぎには963hPaの海面気圧を観測しています。さらに,7時59分には961.6hPaと3.6hPaも急激に低下していることがわかります。これは,消防署の東約300mに地点をほぼ北方向に台風に伴い発生した竜巻が通過しており,この竜巻による気圧低下を記録しています5)

図4 小野田市消防本部で観測された1999年台風18号に通過時に伴う気象要素の推移

●もっと詳しく知りたいひとは
気象サイエンス「竜巻」の原因
1999年9月24日(金) 豊橋市で発生した竜巻災害
特報 巨大竜巻

1999年台風18号


(注)
1)宮澤清治,1.3 気圧,天気図と気象の本,国際地学協会発行,p.14-15,1996.
2)株式会社 佐藤計量器製作所 製品インデックスホームページ
http://www.stsato.co.jp/text/7640-00.html
3)株式会社 太田計器 製品カタログホームページ
http://www.otakeiki.com/pro/main.htm
4)中村理科工業株式会社 デジタルハンディーデータ-ロガー・エコログ ホームページ
 http://www.rika.com/ecolog/ecolog2.htm
5)山本晴彦・丸山 敬・岩谷 潔・鈴木賢士・早川誠而:1999年台風18号の通過時に発生した山口県小野田市の竜巻災害.自然災害科学、19、453-463(2001)