11.気象・天気のはなしJ 地温

1.地温の測り方

 地面より深い所の地中の温度を地温(地中温度)と言います。農作物の生育では、地温が根の生育に大きな影響を与えており、有機物の分解や植物の窒素吸収にも地温の高低が関係しています。たとえば、2002年サッカーワールドカップが開催される横浜国際競技場では、天然芝の根の温度を適切に保つことにより芝の生長を促進させるシステムが導入されています1)。気象庁では、1970(昭和45)年まで地中温度を観測していましたが、現在は観測が中止されています。

1)曲管地中温度計
 地面から深さ30cmまでの浅い層の地温は、ガラス製の曲管地中温度計で測定します。写真1は5cm用と10cm用の曲管地中温度計で、これ以外に地面用(図12))、20cm用、30cm用があります。たとえば、深さ10cmの地温を測定する場合、10cm用曲管地中温度計の球状をした感部を地面から10pの深さ埋め、目盛りの付いている管の部分の先端を少し高くして支柱で固定します。目盛りの部分は保護管に覆われていて二重管になっています。地上に出ている温度計の部分には白色で塗装した覆いをかぶせて直射日光や温度計の破損を防いでいます。

写真1 曲管地中温度計
図1 曲管地中温度計(新・気象観測の手引より転載1)


2)鉄管地中温度計
 地面から深さ50cm以上の深い層の地温は、直径が3cm以上で下端を密閉した鉄管を地中に埋めて、管内に水銀温度計を鎖で吊るして測定します(図22))。観測する深さより長い鉄管を、鉄管の頂部が地面から約10cm高くなるように埋めます。鉄管には雨水やほこりが入らないように、蓋をします。地温の観測は、蓋を取って、蓋の裏側に取り付けられた鎖を引き上げ、温度計の指示値を読み取り、測定が終わるとすばやく鉄管に温度計を戻します。温度計の感部には、地上に引き上げても温度の変化がないようにゴムの被覆がされています。

図2 鉄管地中温度計(新・気象観測の手引より転載1)

3)隔測(地中)温度計
 金属の電気抵抗が温度変化に対して変化する性質を利用したセンサを測温抵抗体と言い、温度特性が良好で経時変化が少ない白金(Pt)を測温素子に用いたセンサが白金測温抵抗体です。白金測温抵抗体は、広く産業用温度センサとして使用されており、このセンサを用いて離れた場所から観測できる温度計として開発されたものが隔測温度計です。気温もこの白金測温抵抗体を用いて測りますが、地温を測る場合には防水加工がされています。写真2は2種類の金属(銅−コンスタンタン)を組み合わせた熱電対を用いて作られた隔測温度計です。センサは地温を測定する深さの地中に水平に埋めて測ります。

写真2 隔測地中温度計

2.地温の観測事例
 乗鞍岳北西斜面に位置する岐阜大学流域環境研究センター高山試験地(東経137度25分30秒,北緯36度8分22秒,標高1,342m)において観測された地温の推移(2000年8月1日〜3日)を図3に示しました。本試験地では、1995年1月より総合気象観測システムを導入し、試験地周辺森林域をフィールドとする様々な研究・調査のための基礎的データを集積しています3)。地温(深さ10cm、20cm、30cm)の他に、気温(℃)、相対湿度(%)、日射量(MJ/m2)を観測しています。乗鞍岳の中腹に位置する高山試験地の気象ステーションでは、夏季でも最高気温25℃、最低気温15℃と冷涼な気候環境にあります。地温は深くなるにつれて最高値と最低値の差(日較差と呼びます)が小さくなり、30cmでは日較差が見られません。気温と比較して地温の最高値は深さ10cmでは16時頃に出現していますが、20cmでは22時頃で約6時間も遅れて現れています(これを、位相差と言います)。これは、地面を照らしている日射エネルギーが地中の深くまで伝わるのに時間がかかるからです。1年間を通してみると、地下約5mにおける地温は外気にあまり影響を受けず安定しています。また、地中深くに温度計を埋設して、火山活動を地温の変化から調べる研究にも利用されています4)


図3 岐阜大学流域環境研究センター高山試験地における日射量,地温,気温の推移(2000年8月1日〜3日)


注)
1)佐藤工業株式会社ホームページ:ソルコン(芝生フィールド育成のための地温最適制御システム)(http://www.satokogyo.co.jp/)
2)毛利茂男:地面および地中温度の測定(第14章)、新・気象観測の手引、(財)日本気象協会(東京)、123-126(1990)
3)岐阜大学流域環境研究センターホームページ(高山試験地気象観測データの公開)(http://www.green.gifu-u.ac.jp/)
4)京都大学附属地球熱学研究施設(阿蘇火山研究センター)
http://w3.vgs.kyoto-u.ac.jp/section/volcanody/volcanody2.html