山口大学

山口大学 共同獣医学部 獣医学科 獣医微生物学教室

研究室紹介

研究テーマ

  • 人獣共通感染症、節足動物媒介感染症の疫学調査
  • 野生動物、伴侶動物、家畜等を対象とした感染症の診断・治療・予防法の確立
  • 動物由来の新規病原体探索
  • 節足動物(マダニ、蚊)由来の新規病原体探索
  • マダニ媒介性ウイルスのマダニ-動物間伝播機構解明
  • マウスモデルを用いた脳炎、熱性疾患、出血性疾患ウイルス感染の病態機序解析
  • ウイルスの安定性、消毒、滅菌効果の検証
  • 抗ウイルス薬、ワクチン等の評価

研究内容の例

動物を対象としたSFTSの疫学調査、診断法の確立、治療薬・ワクチンの基礎研究

 SFTSは、中国ではじめて報告があったマダニ媒介性の新興感染症で、国内においては、2013年に山口県で最初の患者が確認され、これまでに西日本を中心に500人以上の患者が報告されています。ヒトでは、発熱、白血球と血小板の減少、消化器症状などがみられ、致死率が30%近くに及びます。
 最近、国内においてアライグマやチーター、イヌ、ネコなどの動物でも感染、発症例が報告され、特にネコでは300例近くの発症例が確認されており、致死率が60%にも達する感染症です。着目すべきは、ネコやイヌなどのSFTS発症動物から飼い主や獣医療関係者へのSFTSウイルス感染例が十数例以上確認されていることです。発症動物の唾液や糞、涙などの体液にSFTSウイルスが相当量含まれることもわかっており、発症動物からヒトへの感染予防対策が急務の課題となっています。特に、獣医療現場でSFTS感染動物を迅速に診断できる方法が求められています。
 そこで我々は、RT-LAMP法やイムノクロマト法による迅速診断法の確立、伴侶動物や野生動物におけるSFTS感染状況の疫学調査、また、マウスモデルを用いた病態解析、有効な治療、予防法の確立を目指した研究を進めています。

野生動物を対象としたウイルス感染症の疫学調査

 コウモリを起源とするSARSコロナウイルスやエボラウイルスなど、新興感染症の原因となる病原体の多くは野生動物を由来としています。
 我々は、イノシシやシカ、野ネズミ、コウモリなどの野生動物を対象として、感染症の原因となる病原体の検出や血清疫学調査を実施し、動物由来感染症(人獣共通感染症)、新興感染症の発生に備えた研究を推進しています。特に、山口県内において、定期的にイノシシ、シカのサンプルを数年にわたり集めており、数百検体のサンプルを用いた調査を継続して行っています。

マダニ由来新規ウイルスの分離と解析

 マダニはウイルスや細菌、原虫など、ヒトや動物を対象とした感染症の原因となる様々な病原体を媒介します。なかでも、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)やダニ媒介性脳炎(TBE)、重症熱性血小板症候群(SFTS)などのマダニ媒介ウイルス性疾患は、重篤な脳炎や出血熱を起し、致死率も高いことから、公衆衛生上の対策が重要となるアルボウイルス(節足動物媒介性ウイルス)感染症です。
 我々は、国内外の各地でマダニ採集調査を実施し、マダニからの病原体検出・分離を継続して行っています。これまでに、徳島、長崎のマダニからCCHFウイルスに近縁な新規オルソナイロウイルス(トフラウイルス)、山口のマダニから新規フラビウイルス(ヤマグチウイルス)、その他にも、ムコウイルス、オズウイルス、カブトマウンテンウイルスなど、近年新しく見つかってきたウイルスの検出、分離を行っています。これらのウイルスの哺乳動物への感染性、病原性は詳しくわかっていませんが、新興感染症となる可能性を想定し、先回り戦略として、診断系の確立や培養細胞、マウスモデル系を用いた感染性、病原性の解析を進めています。

ベトナムでのマダニ採集のようす
ケニアでのマダニ採集のようす
トフラウイルス感染マウスの特徴的な消化管病変

フラビウイルス脳炎重症化機序の解析

TBEウイルス感染マウスのSPECT像
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 日本脳炎やダニ媒介性脳炎(TBE)は、蚊やマダニにより媒介されるフラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるアルボウイルス感染症です。感染者は、不顕性感染、熱性疾患程度で回復する場合もありますが、重篤な脳髄膜炎を発症すると致死率も高く、回復しても後遺症が残ります。しかしながら、脳炎フラビウイルス感染による重症化、すなわち重篤な中枢神経障害に進む機序は十分にわかっていません。
 我々は、これらの脳炎フラビウイルスを感染させるとヒトと類似の中枢神経症状を示すマウスモデルを用いて、重症化機序の解析を進めています。興味深いことに、同一条件でマウスにウイルス感染させた場合でも、重症化で死に到る個体と軽症経過で回復する個体がみられますが、脳内のウイルス量には差がない、すなわち軽症個体でも中枢神経組織への感染がみられることがわかり、神経傷害に働く免疫応答および感染応答のばらつきが、重症、軽症に分かれる要因ではないかと考えています。
 そこで、重症、軽症に分かれる本質的な決定要因について、網羅的な遺伝子発現解析やT細胞レパトア解析、生体のままマウスを観察できる分子イメージング手法、感染性cDNAクローンによる組換えウイルスなどを用いた解析を進めています。

ウイルス不活化効果の検証

種々のウイルスに対する消毒薬、樹脂・シート、紫外線などによる不活化効果や温度変化等に対する安定性、滅菌条件の検討、不活化メカニズムの解析を進めています。企業等からのウイルス不活化効果検証に関する依頼も受けております。

その他にも、デングウイルス、チクングニヤウイルス、ジカウイルスなどのアルボウイルスやネココロナウイルス、SARS-CoV-2、ウサギ出血病ウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、さらにトキソプラズマ原虫などを対象とした調査研究を進めています。

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