
福祉サービスの多元化について論じる前に、その背景を3つの側面に分けてまとめ
よう。
まず第一に、高齢化の進展に伴う社会福祉概念の変化についてである。
従来、「社会福祉」という言葉自体、福祉に関する法律・制度的なイメージを強く
もつものであった。さらに、福祉とは法律・制度に基づいた国家による救貧・救済的
措置であり、福祉を受ける側の要望や選択をはさむ余地はなかったといえる。この背
景には、福祉の対象者はあくまでも社会の少数であるという実状と、福祉とは少数の
恵まれない人々を国が救済するものであるという意識の存在が指摘できる。一方、高
齢者人口が増加するに伴い、介護を含めたさまざまな福祉ニーズを広い層がもつよう
になった。それとともに、これまで一部の特別なものとしての福祉サービスの対象者
も拡大した。伝統的に、高齢者の福祉は、家族内福祉として私的な場面でのみ完結し
ていたが、現在の家族は、もはやそのニーズに対応しきれない。高齢者福祉のニーズ
が顕在化した結果、社会的な形で対応せざるをえなくなったことも、福祉の概念の変
化と大きく関わっているといえる。
第二に、福祉概念が普遍的な性格を帯びるにしたがって、社会福祉のアプローチが
変化していることもサービスの多元化の背景の1つである。ニーズをもつ層の拡大と
ニーズの多様化に伴い、個別のニーズに対して、必要とされるサービスを提供できる
ことが求められる。つまり、一部の対象者に対し、上から基準をあてはめるといった、
供給側→利用者という一元的な方向だけでなく、利用者の視点も取り入れ、供給側・
利用者の相互作用から生まれる多様なサービスへの需要が高まっているのである。
以上、福祉概念の普遍化と福祉のアプローチの変化という2つの側面に関しては、
付記すべき点として、福祉の価値理念としての「ノーマライゼーション」の思想的成
熟も指摘できよう。スティグマを付与しやすい施設中心主義から、福祉のあるべき姿
としてノーマルに生活することが理念として確立されたことは近年の福祉施策ならび
に福祉の方法論に大きな影響を与えている。
最後に、福祉サービス多元化の3番目の背景として、従来の「措置型」公的福祉を
支えてきた国家財政の行き詰まりを挙げることができる。高齢化の結果として生産年
齢人口が減少することは、すなわち公による福祉を支える財源を徴収する層が減少す
ることである。このような中で、いかにサービスにかかるコストを削減できるかとい
う点が、これまで公のみで行われてきた福祉サービスの分野に民間を含めさまざまな
主体が参入するきっかけにもなっている。
福祉サービスをめぐって、その主体(担い手)が多元化することは、サービスの内
容や質の多元化(多様化)にも関連している。
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