山口大学大学院創成科学研究科,山口大学農学部 生物機能科学科

〒 753-8515 山口市吉田 1677-1
山口大学大学研究推進機構 総合科学実験センター
システム生物学・RI分析施設
教授 真野 純一
tel 083-933-5945/電子メール mano(at)yamaguchi-u.ac.jp [(at) を@に変えてください]

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研究テーマ

当研究室では以下の2つの課題を研究しています。

  • 植物の環境ストレス応答機構。とくに活性カルボニル種の生成,作用,消去機構の解明と作物生産向上への応用
  • 活性カルボニル種を解毒消去する植物成分の同定と利用

研究の目的

1. 植物の環境ストレス応答機構の研究には「植物が生きるしくみを知る」という基礎生物学としての目的と,「環境ストレスに強い作物を開発する」という農学上の目的があります。

  • 環境ストレスとは,乾燥や高温・低温,紫外線,高塩分土壌などの環境条件が厳しく,植物の生育が阻害されることをいいます。環境ストレスは作物生産を大きく減少させています。
  • 植物は発芽した場所から移動しない生活をおくっているため,つねに環境条件の変動にさらされています。したがって,植物はさまざまな条件変化に耐える「ストレス耐性」能力をもともと持っています。ストレス耐性には,物質レベル,細胞レベル,組織レベルでいくつものしくみがはたらいています。しかし私たちは植物のもつストレス耐性能力のごく一部しか解明していません。
  • 私たちは,植物の環境ストレス耐性に関わる新たな酵素2-アルケナールレダクターゼ(AER)を発見し,この研究から,植物の環境ストレス障害の新たなメカニズムを次のように明らかにしました。
  • 上述の酵素AERは,活性酸素が生体膜の脂質と反応してできる一群の毒物「活性カルボニル種(reactive carbonyl species; RCS)」を解毒消去する新規酵素です。AERを過剰発現させた組換え植物は,強光,塩分,アルミニウムなどのストレスに耐性を示しました。ここから,RCSが植物の環境ストレス傷害の要因であることが明らかになりました。
  • RCSは活性酸素と同様に,細胞の生死を決定する重要な化合物群です。私たちはRCSが植物細胞でどのようにして生成し,どんなタンパク質に作用し,何を引き起こすのかを詳しく究明しています。また,RCSを解毒消去するしくみの解明もめざしています。
  • RCSの有害な作用を抑える組換えDNA技術によって,環境ストレス耐性の高い作物を開発すれば,不良環境でも安定した農業生産が期待できます。

2. 活性カルボニル種(RCS)は私たちの身体の中でもストレスによって生成しており,これが様々な疾患や発がん,老化の原因となることがわかっています。植物にはRCSを消去する未知成分があるにちがいありません。これを見つけ,構造を明らかにし,人の健康増進に利用することが私たちのもうひとつの研究の目的です。

最近の発表(論文,講演など)

発表論文 Recent publication

  • Mano, J., Kanameda, S., Kuramitsu, R., Matsuura, N. and Yamauchi, Y. (2019) Detoxification of reactive carbonyl species by glutathione transferase Tau isozymes. Front. Plant Sci. 10: 487.
  • Islam, M. M., Ye, M., Matsushima, D, Rahman, M. S., Munemasa, S., Okuma, E., Nakamura, Y., Biswas, M. S., Mano, J. and Murata, Y. (2019) Reactive carbonyl species function as signal mediators downstream of H2O2 production and regulate [Ca2+]in elevation in ABA signal pathway in Arabidopsis guard cells. Plant Cell Physiol. 60: 1146-1159.
  • Mano, J. and Biswas, Md. S. (2018) Analysis of reactive carbonyl species generated under oxidative stress. In Plant Programmed Cell Death: Methods and Protocols (De Gara, L. and Locato, V., eds.), pp. 117-124, Springer.
  • Yin, L., Mano, J., Tanaka, K., Wang, S., Zhang, M., Deng, X., Zhang, S. (2017) High level of reduced glutathione contributes to detoxification of lipid peroxide-derived reactive carbonyl species in transgenic Arabidopsis overexpressing glutathione reductase under aluminum stress. Physiol. Plant. 161: 211-223.
  • Mano, J., Ishibashi, A., Muneuchi, H., Morita, C., Sakai, H., Biswas, Md. S., Koeduka, T. and Kitajima, S. (2017) Acrolein-detoxifying isozymes of glutathione transferase in plants. Planta 245: 255-264.
  • Islam, Md. M., Ye, W., Matsushima, D., Munemasa, S., Okuma, E., Nakamura, Y., Biswas, Md. S., Mano, J. and Murata, Y. (December 2016) Reactive carbonyl species mediate abscisic acid signaling in guard cells. Plant Cell Physiol. 57: 2552-2563.
  • Biswas, Md. S. and Mano, J. (July 2016) Reactive carbonyl species activate caspase-3-like protease to initiate programmed cell death in plants. Plant Cell Physiol. 1432-1442.
  • Mano, J., Endo, T. and Miyake, C. (July 2016) How do photosynthetic organisms manage light stress? A tribute to the late Professor Kozi Asada. Plant Cell Physiol. 57 (7): 1351-1353.
  • Biswas, Md. S. and Mano, J. (July 2015) Lipid peroxide-derived short-chain carbonyls mediate hydrogen peroxide-induced and salt-induced programmed cell death in plants. Plant Physiol. 168: 885-898.

学会発表 Presentation at conferences

  • 倉光里佳,要田紗也加,松浦凪沙,山内靖雄,真野純一:アクロレインは植物グルタチオントランスフェラーゼの共通基質である.第60回日本植物生理学会年会,名古屋(2019年3月13日),1aF11.
  • 寺田凌太,Md. Sanaullah Biswas, 真野純一:H2O2はカルボニルレダクターゼを失活させ,タバコ細胞のプログラム細胞死に関わるカルボニル種を増大させる.第60回日本植物生理学会年会,名古屋(2019年3月13日),1aF12.
  • 中原一葉,Md. Sanaullah Biswas, 深城英弘,森泉,真野純一:活性酸素種と活性カルボニル種はオーキシンの側根形成シグナルをフィードフォワード調節する.第60回日本植物生理学会年会,名古屋(2019年3月13日),1pG06.
  • Jun’ichi Mano: Reactive carbonyl species modulate hormone signals in plants. The 23rd International Symposium on Plant Lipids, July 10, 2018, Osanbashi Hall, Yokohama, OP-24.
  • 真野純一,要田紗也加,松浦凪沙,山内靖雄:アクロレインは植物グルタチオントランスフェラーゼの共通基質である.日本農芸化学会中四国支部代51回講演会(例会),山口(2018年6月16日),E-7.
  • Jun'ichi Mano and Md. Sanaullah Biswas: Lipid peroxide-derived reactive carbonyl species are critical mediators of oxidative signal in plants. The 7th Asian Symposium on Plant Lipid, December 1, 2017, Academia Sinica, Taipei, S030.
  • Md. Sanaullah Biswas, Hidehiro Fukaki and Jun'ichi Mano: Oxylipin carbonyls are involved in the auxin signalling to initiate lateral root formation in Arabidopsis thaliana. The 7th Asian Symposium on Plant Lipid, December 1, 2017, Academia Sinica, Taipei, S031.
  • Traiphop Phahom, Ryoma Oishi, Jun’ichi Mano, Singhanat Phoungchandang, William L. Kerr: Impact of Thunbergia laurifolia Extracts on Acrolein Scavenging Property. The National and International Graduate Research Conference 2017, March 10, 2017, Pote Sarasin Building, Khon Kaen University.

講演 Invited speech

  • Mano, J.: Reactive carbonyl species function as oxidative signals. On the symposium "Plant Oxylipins and Their Diverse Functions.", 5 December 2016, Tokyo Institute of Technology, Yokohama.
  • 真野純一:野菜の新規な抗酸化機能性.千葉県バイオ・ライフサイエンス・ネットワーク会議平成27年度シーズ発表会「バイオテクノロジー研究の動向−食品、バイオマスから育種まで−」,千葉(2016年1月29日)
  • 真野純一: 活性酸素は細胞にどう作用するのか. 京都植物バイテク談話会 第39回植物バイテクシンポジウム,京都(2015年7月21日)

最近のトピック

オーキシンシグナルによる側根形成には活性カルボニル種が関与することを明らかにしました。

下記論文が The Plant Journal に受理されました。Biswas, Md. S., Fukaki, H., Mori, , I. C., Nakahara, K. and Mano, J. (2019) Reactive oxygenspecies and reactive carbonyl species constitute a feed-forward loop in the auxin signaling for lateral root formation. Plant J. 印刷中.

植物のグルタチオントランスフェラーゼの多くが活性カルボニル種を消去する活性をもつことを明らかにしました。

下記論文がFrontiers in Plant Scienceに受理されました。Mano, J., Kanameda, S., Kuramitsu, R., Matsuura, N. and Yamauchi, Y. (2019) Detoxification of reactive carbonyl species by glutathione transferase Tau isozymes. Front. Plant Sci. 10: 487.

平成30年度卒業おめでとうございます。

農学部生物機能科学科卒業
倉光里佳さん

  • 卒業論文「植物グルタチオントランスフェラーゼTauクラスアイソザイムによる活性カルボニルの消去」

田村奈津美さん

  • 卒業論文「活性カルボニル種を消去する植物成分の探索と精製」

寺田凌太さん

  • 卒業論文「植物細胞において酸化シグナルが活性カルボニル種を増大させるメカニズム」

中原一葉さん

  • 卒業論文「オーキシンの側根形成シグナルに対する活性カルボニルの作用」

日本植物生理学会2019年度年会で研究成果を口頭発表しました。

倉光里佳,要田紗也加,松浦凪沙,山内靖雄,真野純一「アクロレインは植物グルタチオントランスフェラーゼの共通基質である」
寺田凌太,Md. Sanaullah Biswas, 真野純一「H2O2はカルボニルレダクターゼを失活させ,タバコ細胞のプログラム細胞死に関わるカルボニル種を増大させる」
中原一葉,Md. Sanaullah Biswas, 深城英弘,森泉,真野純一「活性酸素種と活性カルボニル種はオーキシンの側根形成シグナルをフィードフォワード調節する」

気孔閉口のアブシシン酸シグナル経路を活性カルボニル種が強めるしくみを解明しました。

岡山大学農学部村田芳行先生との共同研究の成果です。下記論文がPlant & Cell Physiologyに受理されました。Islam, Md. M., Ye, W., Matsushima, D., Rhaman, M. S., Munemasa, S., Okuma, E., Nakamura, Y., Biswas, Md. S., Mano, J. and Murata, Y. (2019) Reactive carbonyl species function as signal mediators downstream of H2O2 production and regulate [Ca2+]cyt elevation in ABA signal pathway in Arabidopsis guard cells.

バングラデシュからの留学生を迎えました。

創成科学研究科 研究生 Most Sharmin Sultana さん

杉本貢一 助教(特命)が着任しました。