はじめに

 このホームページは、日本のシロアリ研究グループの協力によって作られたものです。長い年月をかけて研究された報告や、新たに開拓された多数の研究成果をinternetを通じて世界に発信し、より多くの人に参考としていただくためのものです。 そのような精神が世界のシロアリ研究者に伝わり、その人達が新らた参加することによって進化するホームページとなることを期待しているのです。 今や、情報は 一つの国のものでなく、ましてや個人のものでなく、地球に住む一人一人の共有財産です。そのように考えて、シロアリの研究の進展に寄与できればよいと考えています。 新しい情報が世界のいたるところに届き、そこからさらに新しい情報が届けてもらえることを期待します。

HomePage 作成責任者 山口大学 山岡郁雄 deb10@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp

                           1997.9.18(ver.5) 1998.1.5(ver.6) 2001.10.10(ver.7)

Life cycle

Taxonomy

Phylogeny

Ant & Termite

Digestive system

Intestinal protozoa

Cellulose digestion

文献


シロアリについて

シロアリは節足動物門、昆虫綱、等翅目(シロアリ目)に属するものの総称である。 シロアリはヒトの生活圏に於いては敵視されてはいるものの、本来の生息域は森林であるとか、サバンナであるとかヒトの生息域とは異なっているのが通常である。そのような生息域に於いて、無尽蔵ともいえる植物の遺体であるセルロースを他の生物とは競うことなく主食として繁栄した昆虫である。

日本では「白いアリ」という呼び名であるが、種類によっては白いとは限らない。羽アリとなって飛翔する個体は、茶褐色から黒色に近い。蟻とはもともと縁がなく、むしろゴキブリに近い仲間である。しかし、アリやハチと同様に、高度に社会制を進化させた昆虫である(生活環を参照)。種類数は2500種を越えまだ完全な分類に至っていないので、もっと種類数は増えることが予測される。

シロアリ目は7科に分けられ (系統分類を参照)、シロアリ科は高等シロアリ(higher termite)と呼ばれ、他の6科は下等シロアリ(lower termite)と呼ばれている。高等シロアリと下等シロアリの大きな違いはセルロース消化生理にある。下等シロアリは腸内に原生動物バクテリアが共生し、それらの助けを借りてセルロース消化を行っているのに対し、高等シロアリは共生原生動物なしで、もっと複雑な仕組でセルロース消化を行っている。高等シロアリは全シロアリ属数の80%を占め、全種類数の74%を占める。最古のシロアリ化石はイギリス南部で見つかっており、1億2000万年前(中世代白亜期)と推定され、ハクアシロアリ亜科Valditermes branae とされている。

シロアリとアリの違い

シロアリとアリは非常に良く似た社会組織を作っている。両者はいずれも生殖虫が最初の巣作りを行い、家族を単位とする集団生活をし、カスト (階級)をつくり分業をおこなう。シロアリとアリは形態的に違う。生殖虫は最初有翅虫である。有翅虫は雄・雌がつがいとなって最初の巣作りを始める。シロアリとアリの重要な違いは以下の通りである。

1.分布--シロアリは熱帯に集中し、アリは全地域に分布する。

2.食物--シロアリは植物の細胞壁を、アリは動植物の細胞の原形質を食べる。

3.染色体--シロアリは雄・雌ともに2n、アリは雌2n、雄nである。

4.変態--シロアリは不完全変態、アリは完全変態

5.コロニー構成--シロアリは、王、女王+兵階級(雄と雌)+職階級(雄と雌)、若 虫、女王が欠損したときは多数の副生殖虫が分化する(生活環参照)。アリでは、女王+兵アリ(雄)+職アリ(雌)である。

(以下形態を参照)

6.--シロアリは、有翅虫を除いて、複眼が分化していない。アリは全て複眼をもつ。

7.触角--シロアリは、各節毎に数珠玉状で真直ぐである。アリは竹の節状で中央付近で曲がっている。

8.体節--シロアリは、頭部以下の体節にくびれが無い。アリは、頭部、胸部、腹部が明瞭なくびれを持つ。

9.有翅虫の翅--シロアリは前翅、後翅共に同じ長さである。アリは前翅が後翅より長い。

日本産シロアリの種類

 日本に生息するシロアリは10属12種である。そのうち本州・四国に生息するのは2属3種で、それらを含めてすべての種が九州南部から沖縄の南西諸島に生息している。北海道には、わずか1種しか生息せずそれも旭川以南である。このことからも分かるように、シロアリは暖かい所に生息する。地球規模で見ると、年平均気温が10度の等温線を境にそれより暑い所に生息するのが本来の姿である。

 このホームページでは、とりあえず日本産のシロアリを中心にこれまでに明らかになってきた生態分類・形態消化生理等についてできるだけ多くの写真や文献等を整理して掲載する。

共生微生物

 下等シロアリの後腸には多種類のバクテリアや原生動物が生息しシロアリの食べたセルロースの分解に重要な役割を果たしている。

 日本産のシロアリのうちヤマトシロアリ、イエシロアリ、キアシシロアリの後腸に共生する原生動物はすぺて鞭毛虫で、Koizumi(1921)によって8属に分類されている。

 ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)では当初5属11種が記載されていたが、最近さらに3属4種が分類され合計8属15種となった。

 イエシロアリ(Coptotermes formosanus)では3属3種が記載されている。コウシュンシロアリ(Neotermes koushunensis)では5属9種が生息することが最近安藤ら(1995)によって明らかにされた。

 後腸における原生動物の数と感染時期について、ヤマトシロアリの成熟worker一匹で約12万個体の原生動物が計数されている。それらの感染時期はシロアリの3齢若虫からであることが山岡ら(1987)によって明らかにされた。しかもそれらの原生動物は後腸のなかで比較的一定の部位に生息するものと、広範囲に生息するものとがあって大型原生動物であるTrichonymphaTeratonymphaは後腸の前方部に位置し、特にTrichonymphaはセルロース消化の主役をはたしている。イエシロアリの後腸内原生動物については、吉村ら(1995)が同様な視点にたった計測を行いその結果が報告されている。

 後腸内原生動物の体外培養は、古くから(Trager;1934)試みられているが、継代培養には成功していない。その後Yamin(1978, 1980 )によって培養は試みられてきたが一部の小型原生動物の培養に成功しているものの、セルロース消化の主役を担う大型原生動物の培養にはまだ成功していない。Yamaokaら(1976-)は、conditioned mediumの作成とそれを用いての培養法を種々検討し、次の事を明らかにしている。

1. 腸内原生動物の培養には、或種の生きたバクテリアが必要である、

2. 培養にはセルロースが必須であり、原生動物によるセルロースの取り込みは極めて選択的である、

3. 培養液に投与されるセルロースの量を増やせば、取り込み量も増え、生存率も上がる、

4. 培養液にシロアリの唾液腺由来酵素あるいはそれに相当する酵素を添加することによって生存率は増加する、

5. 培養液に窒素源として、アミノ酸を入れることによって生存率は増加する、

等である。しかし、このような結果が得られているとはいえ、培養14-15日には、生存個体数は減少し継代培養に成功したとは言えないのが現状である

シロアリの消化管

 シロアリの消化管の基本的構造は、他の昆虫類と同様である。即ち、前腸、中腸及び後腸からなる。前腸及び後腸は上皮最外層はクチクラで覆われている。前腸内腔は厚いクチクラで覆われた隆起が生じそれらは、シロアリが食べた食物の最初の粉砕器官と考えられている。

 後腸のクチクラ層は後腸の部位によって様々な厚さと微細構造を示す。共生微生物等が生息する部位(paunch)は原生動物が感染する時期と一致して独特の形態分化を遂げる。

 中腸は組織学的には、腺構造を示す小単位の集まりである。それらの小単位の腺構造と腺構造の間には、食細胞が分布し腺の機能を終えて脱落していく細胞を取り込む役割を持っている。