Short History

 1924年Clevelandはシロアリの腸内原生動物を除去すると、シロアリは長く生存することはできないことや、原生動物を再感染させると生存可能となることから、シロアリと原生動物の間には共生関係があることを明らかにした。その後Hungate(1939)はシロアリ後腸内原生動物が嫌気的条件で木片を分解しうること、その最終産物がシロアリによって利用されることを実験的に示し、代謝産物は酢酸と炭酸ガスであることを示した。これより先、1938年Hungateはセルロースの一部はシロアリの前腸又は中腸でわずかに分解されることを示したが、その量からはシロアリのエネルギー源としては重要でないと結論していた。

 1964年Yokoeは、Reticulitemesにおいて、熱処理によって腸内原生動物を除去したのにもかかわらず、或種のセルラーゼ活性が検出できることから、シロアリ自身もセルラーゼを生産することを示唆した。Retief & Hewitt (1973)はHodotermes mossambicusに於いて、β-glucosidaseとendo-gulucanaseが前腸と中腸で検出されたことを報告した。

 1975年Yamaokaらは、シロアリ(Reticulitermes speratus)には2種類のセルラーゼがあって、一つはシロアリ自らが唾液腺で生産し、もう一つは後腸の原生動物が生産することを示した。その後2種のセルラーゼの存在や唾液腺での生産について、Veiver et al.(1982), Hogan et al.(1988)らがそれぞれMastotermes darwiniensis, Coptotermes lacteusで確認した。

 シロアリのコロニーは数百万個体にもなる。食物を効率よく採取し効率よく配分することが不可欠である。食物採取や消化の仕方はカストにより異なっている。職階級は自分で餌をとるが、生殖虫、兵階級、若虫等は職階級から餌をもらう。この受け渡し食には、2種類ある。口移しでもらう場合(stmodeal food)と、肛門食(proctodeal food)である。有翅虫は、郡飛の前に職階級から餌をもらうばかりでなく、郡飛の後、ペアとなってコロニーを作った後も若虫を育てる役もあるところから、自ら食物採取し消化する能力を持っている。

 下等シロアリであるヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)では、近年 セルロース消化機構が詳細に分かってきた。

 ★シロアリ体内でのセルロース消化には、共生原生動物が関与している

 ★シロアリ自らもセルロース消化のための酵素(セルラーゼ)を生産している

 ★共生原生動物は後腸にのみ生息しており、その生息環境を整えるためにバクテリアが重要な働きをしている、等である。

 それらの3っの関係を模式的に表わしたのが図1.2である。

 シロアリが摂取したセルロースは、前腸、中腸を通過する際は殆んど消化されないで後腸に達する。後腸に到達したセルロースは、そこに住む原生動物によって取り込まれ第一段階、及び第二段階の消化を受け原生動物体内に一旦貯蔵される。その後2次代謝産物は腸内に放出され、後腸壁細胞で吸収される(図1)。

シロアリと腸内原生動物との複雑な関係は、極最近になって培養実験によっても確認された。さらに、腸内原生動物の生息には数種類のバクテリアが共存する必要が有ることも体外培養実験で確認された。

図2は、バクテリアの中でメタン生産菌の関係が示されている。メタン菌は原生動物によって代謝された代謝産物の内、水素や炭酸ガスを使ってメタンに変える仕組をもっている。これによって腸内にあっては有害となりうるガスの排出を調節していることになる。

消化管の構造

 シロアリの消化管の基本的構造は、他の昆虫類と同様である。即ち、前腸、中腸及び後腸からなる。前腸及び後腸は上皮最外層はクチクラで覆われている。前腸内腔は厚いクチクラで覆われた隆起が生じそれらは、シロアリが食べた食物の最初の粉砕器官と考えられている。

 後腸のクチクラ層は後腸の部位によって様々な厚さと微細構造を示す。共生微生物等が生息する部位(paunch)は原生動物が感染する時期と一致して独特の形態分化を遂げる。

 中腸は組織学的には、腺構造を示す小単位の集まりである。それらの小単位の腺構造と腺構造の間には、食細胞が分布し腺の機能を終えて脱落していく細胞を取り込む役割を持っている

図1

図2