ピノチェット判決−−人権の新時代の誕生

(アムネスティ・ニュースレター1999年1月号)

アムネスティはイギリス内務大臣がアウグスト・ピノチェット元将軍の送還申請手続きを進める決断を下した事によって「人権にとっての新時代が幕を明けた」との声明を発表。世界人権宣言50周年の今年、世界中の人権侵害の犠牲者及び人権擁護を訴える人々にとって、これ程宣言の本質を再確認できる出来事は無かっただろう。
スペイン政府の正式な送還申請提出、そして元将軍は免責されないというイギリス上院の判決、最後にイギリス内務大臣による今回の決定という一連の出来事は、1948年に世界人権宣言の採択以来の人権の歴史の上、大変重要である。
世界中で未だに起こっている実にひどい人権侵害の事例数を考えると、今年の世界人権宣言50周年記念日は多くの政府にとって恥ずべき一日であった。その一方で、特にチリの犠牲者やその家族らの25年以上もの闘いを考えると、独裁者の免責を許さないという重要な一歩を踏み出した事は全く喜ばしい限りである。
今回のジャック・ストロー内務大臣の歴史的な決断の次は、ロンドン市行政長官がスペイン・スイス・ベルギー・フランス政府が送還を正当化できるだけの証拠を提出したかを調査する。その証拠が承認されたならば、内務大臣が、@上記4政府に元将軍を引き渡すか、またはAイングランド・ウェールズの法務長官が犯罪調査を始めるか、の決断を下すまでの間、行政長官は元将軍をイギリスにどどめ置くため収容命令をだす。英国法及び国際法では政治的、経済的、及び他の理由によってこの決断を動かすことは許されない。
自身の任命による議会での地位と、1978年の”自己”恩赦法並びにチリ憲法における特別規定によって、アウグスト・ピノチェット元将軍は法の壁を自分および他の人権侵害で訴えられている人間の周りにはりめぐらせ、チリでの裁判をほぼ不可能にしていた。今日の判決は犠牲者とその家族をもう一歩、正義に近づけた。